倉敷から夢、発信「倉敷人」シリーズ11 岡本達弥
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一点ごとに異なる表情を見せる、簡素ながら温かみのある作風ー。 土づくりから丹精込めた器に、深い趣が宿る。
真冬の凛とした冷気につつまれた一月の末、倉敷市酒津の高梁川西岸にある兜山窯の工房を訪ねた。ここで作陶にいそしむのは岡本達弥さん。祖父・父と続く酒津焼兜山窯の3代目として作品作りに精を出している。 昭和50年生まれの岡本さん。倉敷市阿知の実家が店を兼ねていたこともあり、幼い頃から祖父と父の作品を身近に触れながら過ごしたという。ところが本人曰く「当時、作陶の経験はほとんどありません」と意外な言葉。「僕は長男なので後を継ぐのが当たり前という環境でしたが、高校までは、ものづくりや美術に関する世界を広く学びたかったのです。でも、そのことが今すごく生きています」と、岡本さん。
下の部分に黒い色の釉薬を使用して焼き上げた、深みのある仕上がりが印象的な花器。彫り込みを入れたデザインが、作品の存在感を際立たせている。
創造の幅を広げたあと、大学で陶芸を専攻した岡本さんは、卒業後、兜山窯で本格的な作陶に着手。土づくりや釉薬の生成などには大変苦労したといいつつも、個性的な作品を精力的に生み出していく。
「ここの土は歪みやすく崩れやすい。窯の中でも動きます。でも、だからこそ柔らかさを感じる特徴的な作風になります。釉薬も色々な種類を試行錯誤しながら使うことで作品のバリエーションが増えました」と、難しさを強みとした味わい深い作品が、今、好評を博している。 さて、倉敷生まれ・倉敷育ちの岡本さん。故郷への思いを尋ねると「生まれ育った町ですから倉敷は大好きな場所。でも情報発信が得意でないせいか、まだまだ知られていない魅力が多い。もっとPRが必要ですね」と、今後の課題に言及。自らも陶芸教室を開催予定とのことで、伝統をつなぐ活動にも積極的だ。 酒津焼の魅力を深めながら、時代に即した作品を意欲的に生み出す岡本達弥さん。今後、ますます味わいを増していくのが楽しみだ。
History
- 倉敷市出身。
- 2003年 岡山県美術展にて山陽新聞社賞受賞。
- 2005年 田部美術館大賞「茶の湯の造形展」にて入選。
- 2008年 日本伝統工芸中国支部展にて入選。
- 2014年 美濃陶芸庄六賞茶碗展にて奨励賞受賞及び入選。
- 2015年 現代茶陶展にて入選。
兜山窯(倉敷酒津焼)
岡山県倉敷市阿知3-8-3 Tel:086(422)1142
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