器の中に、まるで一枚の絵画が広がっている。
鮮やかな赤、深みのある緑、明るい黄、艶やかな紫、そして落ち着きを感じさせる紺青。
ひとつひとつの色が響き合い、花や鳥、山水、人物などの美しい文様を引き立てています。九谷焼を目にしたとき、思わず惹きつけられるのは、その華やかな色彩と大胆な絵付けではないでしょうか。
「九谷五彩」と呼ばれる五色を中心に、器の中に描かれるさまざまな世界。そこには、古九谷から現代へと受け継がれてきた、九谷焼ならではの豊かな個性があります。
今回は、色彩の美しさから、個性豊かな六つの画風、そして現代へと広がる新しい表現まで、九谷焼を彩る美の世界をご紹介します。
九谷焼の華やかなデザインを語るうえで欠かせないのが、「九谷五彩」と呼ばれる色彩です。
赤・緑・黄・紫・紺青の五色を中心とした和絵具は、鮮やかさの中にも深みがあり、九谷焼ならではの豊かな表情を生み出します。これらの色を大胆に組み合わせることで、器の上に一枚の絵画のような世界が広がります。色の組み合わせや配置にも、九谷焼ならではの美意識が感じられます。また、九谷焼にはさまざまな画風があり、それぞれ異なる色使いや表現が楽しめます。
ここからは、九谷焼を代表する六つの画風に注目し、それぞれのデザインの魅力を見ていきましょう。
九谷焼を代表する画風のひとつが「古九谷」です。
九谷五彩を用いた大胆で絵画的な表現が特徴で、青(緑)・黄・赤・紫・紺青の色彩で花鳥や山水などをのびやかに描きます。
細部を緻密に描き込むというよりも、力強い線と大きな構図でモチーフの存在感を際立たせているのが魅力です。また、赤を使わず、緑・黄・紫・紺青などを中心に器全体を色で埋める「青手」と呼ばれる表現もあります。
写真:再興九谷の中でも最も名高い吉田屋窯の「色絵椿柳宿禽図八角鉢(いろえつばきやなぎしゅっきんずはっかくはち)」 出典:ColBase
「木米」は、赤を基調に人物を中心とした中国風の絵柄が特徴です。全面に赤をほどこし、人物を主に五彩を使って描き込むことで、古九谷とは異なる華やかさを生み出しています。人物の表情や衣装は細かく描かれ、中国風の上絵を思わせる異国情緒が漂います。
赤を背景にすることで、緑・黄・紫・紺青がアクセントとなり、全体に華やかなまとまりが生まれます。
写真:木米が好み得意とした呉州赤絵で描かれた「色絵龍文五角鉢」(いろえりゅうもんごかくばち) 出典:ColBase
「吉田屋」は青手古九谷を受け継いだ画風で、赤を使わず青(緑)・黄・紫・紺青の四彩で構成されます。落ち着いた重厚な色調と、器全体を埋め尽くすような緻密な文様が特徴です。
花鳥や草花、山水などを細かく描き込み、近くでは細部の美しさ、離れては色彩のまとまりによる重厚な美しさを楽しめます。
写真:色絵山水図大平鉢(いろえさんすいずおおひらばち) 出典:ColBase
「飯田屋」は、赤を基調とした細密な描写が特徴です。
人物を赤で緻密に描き、小紋などの文様で器全体を埋め尽くし、所々に金彩を加えます。その繊細さから「九谷赤絵」とも呼ばれ、九谷焼の中でも特に細やかな表現が際立つ画風です。
一見赤一色に見える中にも、細かな線や文様が幾重にも重なり、緊張感のある美しさを生み出しています。古九谷の大胆さとは対照的に、細部までじっくり楽しめるのが飯田屋の魅力です。
写真:緻密な赤絵金彩の絵付けが特徴の「赤絵猪文稜花鉢」(あかえいのししもんりょうかはち) 出典:ColBase
「永楽」は、赤と金を中心とした豪華なデザインが特徴です。
器全体を赤で彩り、その上に金で文様を描くことで、華やかで格調高い雰囲気を生み出します。九谷焼の中でも特にきらびやかで、京焼の流れを感じさせる上品さも併せ持つ画風です。
写真:金襴手を得意とした永楽和全の作品「色絵金襴手龍文大皿(いろえきんらんでりゅうもんおおざら)」 出典:ColBase
「庄三」は、古九谷・吉田屋・赤絵・金襴手などを取り入れた華やかで複雑な画風です。
器を区画に分けて異なる文様や色彩を配する「間取り方式」により、全体を一つの華やかな世界に仕上げます。和絵具と洋絵具による豊かな色彩も加わり、細部まで描き込まれた、色彩豊かで豪華な作品へと仕上がります。
さまざまな画風を融合した庄三は、九谷焼の華やかさを象徴する存在です。
写真:「色絵雲龍花鳥図盃洗(いろえうんりゅうかちょうずはいせん)」 出典:ColBase
「九谷五彩」という共通する色彩がありながら、その使い方によって作品の印象は大きく変わります。
九谷焼のデザインを見ていると、「大胆」と「繊細」という、一見相反する魅力が共存していることに気づきます。器いっぱいに鮮やかな色彩を広げる大胆な構図がある一方で、人物の表情や衣装、小紋などを細かな線で描き込む繊細な表現もあります。色彩の重なりや文様の細やかさなど、目を向けるところによって異なる表情を見せてくれるのも、九谷焼の魅力です。
遠くから見ても華やか。
近くで見ても面白い。
そんな「二つの楽しみ方」ができることも、九谷焼のデザインの大きな魅力です。
写真:現代の九谷焼
伝統的な彩りを受け継ぎながら、現代の九谷焼はさらに表現の幅を広げています。九谷五彩や伝統的な文様を生かしながら、北欧風やモダンなデザインなど、現代の暮らしに寄り添う新しい表現も生まれています。
華やかな色彩を楽しむ器から、日常の食卓になじむ器まで、その表現は幅広く広がっています。伝統を受け継ぎながらも、新しい感性を取り入れて変化していく。そこにも、現代の九谷焼ならではの魅力があります。
九谷焼を手に取る機会があれば、ぜひ「何色が使われているか」だけでなく、「どの色が主役になっているのか」「どこに目を引かれるのか」にも注目してみてください。
知れば知るほど、その華やかな彩りの奥にある、九谷焼の豊かな個性。
それもまた、九谷焼を眺め、使う楽しさのひとつではないでしょうか。
丸小皿「市松松竹梅」
直径9.5cm×高さ1.7cm
1,200円(税別・2026年9月18日現在の価格)
緑を基調にした日常づかいの小皿。
「市松」も「松竹梅」も縁起の良い吉祥文様で、組み合わさることで、「途切れることのない幸福や繁栄」を意味するようになります。
現代の食卓にも合うように、カジュアルな雰囲気もあり、食卓を華やかにしてくれます。
花瓶「金箔 竹雀」
口径4 cm× 高さ27cm
35,000円(税別・2026年9月18日現在の価格)
竹の間を二羽の雀が仲良く飛ぶ姿が縁起がいい花瓶。
「竹」と「雀」の組み合わせは、「子孫繁栄・家内安全・五穀豊穣」などを意味し、とても縁起が良い。
陶器のザラザラとした質感に金箔を貼り、上品さと渋みが一層増しています。こちらは、一枚の日本画になったような花瓶です。
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