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倉敷から夢、発信「倉敷人」シリーズ2 岡本研作

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釉薬を重ねて増す、深みと光沢―。 手に馴染む、柔らかな存在感―。 日常の中で生きる素朴な味わいにこそ、酒津焼の放つ魅力が見えてくる。

水辺の凛と澄んだ空気が頬に心地よい晩秋の一日。
倉敷市酒津公園北側の貯水池畔を訪れた。
いつの頃からか地名を冠して呼ばれるようになった酒津焼窯元の店舗兼工房が、ここに落ち着いた佇まいを見せている。

六代を継承したばかりの岡本研作さんは昭和32年の生まれ。
幼少より4代で祖父の静太郎氏、5代で実父・章氏の作陶の息遣いを身近に感じながら、自然とこの道に入り三十数年になる。

酒津公園のすぐほとりにある酒津焼窯元

「祖父や父から具体的に何かを教わった記憶はありません。目で見て、肌で感じながら、自然と酒津焼の伝統を学んできたとでもいうのでしょうか―」。

親子相伝で引き継がれてきた酒津焼の素朴で健康的な味わいは、日常使いの中でこそ存在感を放つともいえるが、岡本研作さんの作風も例外ではなく、茶器・花器・食卓用品といった作品には、心なごませる素朴な温かみが見事に結実している。

透明感あふれる

透明感あふれる"青"の色彩が鮮烈な印象を放つ海鼠釉茶碗。高温で焼くことによる釉薬の不思議な変化が、見る者に圧倒的な存在感を放つ一品だ

今年も、登り窯には既に千点近くの新作が収められているというが「晩秋の晴天を狙って火を入れます。1300度で40時間。気持ちの入れどころです」と、新たな作品づくりに余念がない。

開窯から140年以上。
倉敷を代表する工芸品として根付いた酒津焼ではあるが、若い世代にも魅力を知ってもらおうと、現在、一日陶芸体験を開いている。

「土に触れるのは初めての方ばかりですが、とても好評です」とは研作さん。
古き伝統が新たな輝きを放ちながら、少しずつ、その裾野を広げつつある。

「倉敷は色々なものを受け入れる柔軟な土地柄。古いものを大切にしながら新しいものにもチャレンジする。そんな気風は、愛すべき故郷の魅力ですね―」。

今後は、生活をより豊かにする作品を作り続けていきたいという岡本研作さん。
倉敷酒津の豊かな自然の中で、新たな境地を模索する日々が続く。

History

作品
  • 昭和32年 倉敷市生まれ
  • 昭和57年 全国陶芸展入選 以降連続入選
  • 平成元年 岡山県美術展入選
  • 平成9年 全陶展陶光会賞受賞
  • 平成19年 全陶展谷中田賞受賞 倉敷新鋭作家選抜美術展
  • 平成25年 一畑百貨店松江店にて六代継承記念展
  • ◇東京・横浜・名古屋・金沢・加古川・萩・鎌倉などでグループ展
  • ◇現在全陶展理事・審査委員/茶道裏千家淡交会倉敷支部副支部長

酒津焼窯元
倉敷市酒津2827 Tel.086-422-1962
※作品は「食器のみつはた」にて展示即売しております。

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